技術情報

サージエネルギー減衰方式の特長

1.耐雷対策のビジョン

激雷地域北陸では、夏季だけではなく冬季にも雷が多く発生し、各種システムの管理者を悩ませてきました。その激雷地域北陸で長年雷害対策に取り組んで参り、この間に蓄積した体験的なノウハウを基に当社独自の「サージエネルギー減衰方式」による「高速回線避雷ユニット」を完成させました。その性能は、国内外の厳しい環境の下、多くの電源設備や通信システムを確実に保護した実績により高い評価をいただいております。

現地調査による最良の対策手法の検討と高速回線避雷ユニットを採用した実フィールドにおいて、より有効な耐雷対策をご提案いたします。

2.サージエネルギー減衰方式の特長

従来の避雷器は、雷サージの電圧のみを減衰させて機器を保護するのが基本的な動作原理であり、従って避雷器のサージ減衰能力が評価される場合、避雷器の動作開始電圧や制限電圧が重視されました。しかしこれは雷サージの破壊力を電圧のみで評価し、雷サージの電流と継続時間は無視されていることになります。例えば、物体の衝突による破壊力は、単に物体の大きさだけではなく、物体の重量や衝突速度によっても左右されることは明らかです。

同様に、雷サージの破壊力も雷サージの電圧だけではなく電圧×電流×時間=エネルギーで評価する必要があり、避雷器には雷サージをエネルギーレベルで減衰させる能力が要求されると考えられます。

森長電子が開発した高速回線避雷ユニットは、並列素子が雷サージの電圧を減衰させ、直列素子が雷サージの電流を減衰させます。
また動作遅れがない直列素子が並列素子の動作遅れをカバーすることにより、雷サージの高速吸収ができ、これにより雷サージを「電圧×電流×時間」で減衰させるサージエネルギー減衰方式を実現しています。

近年の雷害状況と、雷害対策の必要性

1.近年の雷害状況

近年のゲリラ豪雨に象徴されるように、激しい雷がゲリラ的に発生する状況が全国的に増えています。これは過去にあまり発生がなかった場所にも激しい落雷が生じ、これに伴って付近一帯の電子設備に大きな雷害が発生する危険性が増していることを意味します。

過去: 山・谷間・山麓部等の特定の場所

現在: 住宅地なども含めた不特定の場所

雷に比較的に強かったこれまでの電気設備から、雷に非常に弱い電子設備への更新が進んでいるとともに、これらの電子設備が雷の発生しやすい郊外へと普及が進んでいます。これが雷害の増加している大きな要因でもあります。

電気設備

電子設備の更新

電子設備の郊外への普及
雷害の増加】

2.雷害対策の必要性

近年の電子設備は高度・高機能化により、故障復旧はメーカー対応の場合が多く、現場(ユーザー)対応での迅速な復旧が困難となっています。そのため、落雷の増加や設備の高度化に備えた雷害対策の必要性が増しています。

高度・高機能化された電子設備の雷害

現場対応では復旧できない場合が多い

雷害復旧の遅れ
【雷害対策の必要性が増加】

雷によるシステム停止がもたらす2次的損害(営業損等)が、設備の故障復旧費用よりも遥かに大きい場合が増えてきており、上記以上に雷害対策の必要性が増しています。

24時間稼働のインフラ設備や工場
【雷害による損害の深刻化】

生産設備の雷害によるシステム停止
二次的損害が故障復旧費用よりも大きい】

安定した国民の生活・生産活動のためにも雷から保護された設備の安定稼働が重要

設備を雷害から保護し、また設備寿命を維持していくためにも有効な雷害対策が必要

雷害対策の基本と、有効な避雷器

1.雷害の発生原因

雷害を発生させる雷サージには、雷の直撃(落雷)による「直撃雷サージ」、雷によって電気ケーブル(電源ケーブル及び信号ケーブル)に間接的に発生する「誘導雷サージ」、及び避雷針や鉄塔などへの落雷電流の一部が大地を伝って接地から侵入する「接地雷サージ(逆流雷サージ)」の3つの種類があります。但し直撃雷サージの発生はごくまれで、大半は誘導雷サージまたは接地雷サージが発生し、雷害の原因となっています。※雷サージとは雷によって発生する電気衝撃波(電気津波)のこと。

2.避雷器(SPD)による対策

近年の電子機器は微弱な電圧及び電流で動作する半導体素子の多様により、サージ耐力が極端に低下しているため雷害が多発していると言えます。避雷器は、電気ケーブルから侵入する誘導雷サージを接地側にバイパス吸収し、また接地ケーブルから侵入する接地雷サージを電気ケーブルの屋外側にバイパス吸収することで、電子機器を保護するものです。

避雷器による対策は、その他の対策に比べて実現性や費用対効果に優れている場合が多いため有力な対策と言えます。しかし、その対策効果は避雷器の性能に左右される場合があるため、周囲の環境や設備の耐力、重要度に応じて避雷器の機種や適切な設置個所への施工が必要になる場合があります。

3.接地改善による対策

接地の基本性能を表す接地抵抗は、接地極の土壌抵抗率に大きく左右されるため、土壌抵抗率が悪い(大きい)と必ずしも良好な接地が得られるとは限りません。そのため、良好な接地への改善工事は実現性や費用対効果が問題となる場合が多く見受けられます。また、雷サージを吸収するための接地であるにも関わらず、逆に接地雷サージが電子機器に侵入し、雷害となるケースを考慮すると、接地改善のみによる雷害対策では十分とは言えません。

4.避雷針による対策

これは雷の直撃(落雷)から建築物自体を保護するための対策であり、建築物の中、または周辺にある電子設備を保護するものではありません。
逆に避雷針に落ちた雷電流により間接的に発生する誘導雷サージまたは接地雷サージ(逆流雷サージ)によって電子設備が故障する場合があるため、これに対する対策が必要な場合もあります。

雷害対策は「避雷器(SPD)による対策」と、これをサポートし実現性のある「接地改善による対策」が基本となります。

5.有効な避雷器(SPD)

雷サージは誘導雷サージだけではなく、接地から侵入する接地雷サージ(逆流雷サージ)も存在します。

そのため避雷器(SPD)は、これらの両サージに対応できる性能(機能)が要求されます。弊社高速回線避雷ユニット」は、これらの両サージに対応し、電子機器を十分に保護する性能(機能)を有した避雷器(SPD)です。